胃ろうなんかしなくていい

「治る見込みのない患者への胃ろうは、必要な医療か?」についての(医師対象の)調査結果が発表された。

申し訳ないが、ここでは「胃ろう」についての説明はしない。
お知りになりたい方は、ご自分でお調べいただけたら幸いである。

詳しく知っておいて損はない。
誰しも突然、判断を迫られる可能性があるからだ。

冒頭の質問内容にあるように、胃ろうとは、治る見込みのない患者への延命措置のイメージが強い。

私は一時期、胃ろうについて検索しまくっていたが、やはりそういう患者のことばかりであった。
他が弱り切っているのに胃ろうで延命することの是非、みたいな。

だが、胃ろうが関係してくるのは、そういう患者だけではないのだ。

私の身内の場合は、脳血管の疾患で飲み込む機能が弱まったため、胃ろうで栄養を補給しながら、飲み込む訓練をした方がいい、と主治医に言われた。

要するに、延命のためではなく、トレーニングのための胃ろうである。
延命でも治療でもなく、たかがトレーニングのために手術を行うわけである。

それまでは鼻からチューブを入れて栄養を補給していたのだが、「そろそろ(期間的に)限界です。胃ろうで本格的に栄養を取った方がいいいです」とも言われ・・・。

そんな時期なのだ、私が胃ろうについて検索しまくっていたのは。
だけれども、私の身内のようなケースは見当たらなくて。

逡巡した挙句、いったんは家族で胃ろうにゴーサインを出したものの、気持ちは晴れなかった。

ところがある日、別の医師が回診に来て、身内の状態を見て「順調に回復してます。訓練したらすぐ食べられるようになりますよ・・・あれ?胃ろうすることになってるんですねぇ」と言って去って行った。


ちょっとー! ちょっと! ちょっと!


・・・私たち家族は改めて話し合い、手術日まであと2日というところで、手術のキャンセルをお願いしたのである。

するとその後、その身内は割とすぐに鼻のチューブが外され、何の問題もなく口から食事が取れるようになっていき、元気に退院したのである。

胃ろうなんかしなくてよかった・・・つくづくそう思った。

あの検索しまくってた時期に、私はこういう記事を欲していた。

主治医はしきりに胃ろうを勧めるが、家族としては拒みたかった。
今まで生きてきて、この時ほど迷いに迷ったことはなかった。

そういう時に決め手になるのは、経験者のエピソードだ。
とにかく同じ状況下にあった人の声が聞きたかった。
この際、胃ろうを推奨してるのかしてないのかは、どちらでもよかった。

しかし探し出すことはできず、途方に暮れた。

そう。
私は、あの時の私と同じ状況にある人のために、この記事を残そうと思う。

コメント

  1. 初めまして。いつも拝見しております。

    今、実母が胃ろう手術をしたばかりです。
    私は、胃からの食物摂取で、早く体力を回復して欲しくて、胃ろうの手術をお願いしました。

    術式も簡単で30分もしないで負担なく行えるし
    落ち着けば、お風呂にも入れる。
    胃ろうとはピアスのようなものと言われる様に、すぐに穴は塞がってしまうので
    口からの食物摂取が可能になれば胃ろうを終わりにできる。
    何より、家やホームでの生活が経鼻栄養よりしやすい。
    ということから、そちらの選択をしました。

    確かに全くの回復の見込みのない方への胃ろうを反対される方の気持ちはすごくわかりますが
    母の様子を見ると、胃ろう造設に過度な心配はいらないのではという気はしています。

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    1. ぐうぐうがんもさん、コメントありがとうございます。

      もちろん、もちろん。
      胃ろうの手術は、比較的簡単で安全性の高いものです。
      穴も自然に塞がっていきますしね。

      でも一方で、デメリット的な情報も存在していて、一体この差は何だろうなぁ、という戸惑いがありました。

      私の身内の場合は、どう見ても胃ろうが必要とは思えなかった。
      もちろんそれは素人目に見て、ということなんですけど。
      とても順調に回復していたのに、いきなり「胃ろう」と言われてすごく驚いたんです。

      主治医に勧められるままお願いする、というのも怖かった。
      何か他に判断材料が欲しかったんですね。

      ブログであんな記事タイトルにしましたが、それは「胃ろうは拒絶せよ」と言いたいのではなくて、「医師の言いなりになっていませんか? それほど必要でない場合もありますよ?」と言いたかったのです。
      何も考えずに「医師の言う通りにすれば間違いはない」と思い込んでる人や、納得できないまま「医師の言うことに逆らえない」ということで渋々承諾する人に、ちょっと立ち止まってみてほしかったんですね。

      もちろん「やってよかった」「やらなくてよかった」というのは結果論に過ぎません。
      ただ、事前に自分が納得した上であれば、どんな結果でもきちんと受け止めることができるのではないでしょうか。

      ぐうぐうがんもさんのように、「胃ろうで、早く体力を回復して欲しい」という、しっかりとした思いがあれば、躊躇なく胃ろうに踏み切っていいと思いますし、それが正解だとも思います。

      お母様が早くお元気になりますよう、お祈りしています。

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