断らなかった女と断った女

「行かなきゃよかったじゃないか」
「断ればよかったじゃないか」

はい、断りました。

断らなかったのが、中居トラブル女子アナ。

私のケースと彼女のケース、共通点がありまして。
①問題の会食以前に、きっかけとなる会食が存在する
②他にメンバーがいると思ってたら、違った
③相手の方が立場的にも年齢的にも断然上


だけど、断るのだって大変なんだよ~~~ッ!

これは私の大学時代のエピソードである。


ある日、私が通う大学の男性講師から「今日、飲み会するから来ない? Aさんも誘ってみて」との電話が入った。

Aは同じ大学の友人。
私とAはその先生の授業も受けているし、先生は私たちにとって名目上の「学生生活アドバイザー」的教官でもあった(だから私の連絡先も知っている)。

私がAに電話をしてみると、Aは「行かない」とのこと。
多分、その先生のことが苦手だった。

実は私も苦手だった。

Aが行かないなら、尚更私も行きたくない。
Aが行けないことを伝えるついでに、自分も断ろうと思った。

電話をかけると、先生は「いーよ、いーよ、じゃ、一人で来て。待ち合わせ場所はさぁ・・」と話を進め、私は何も言い出すことができなかった。

ちょうど数週間前にも、その先生主催の飲み会があり、私とAを含め大勢の学生が参加していた。

「あれだけ大勢いれば、私一人いなくたってわからないかも」
そう思った私は、待ち合わせ場所に行かない、という選択をした。

待ち合わせ時間が過ぎて、先生から電話があった。
「何で来ないの?」

私は「連絡もせずにすみません、ちょっと急用で行けなくなってしまって・・今日は皆さんで楽しんできてください」と伝えた。

すると先生は、押し殺したような声で・・


ひとりでどう楽しめって言うんだよッ!?



この恐ろしさ、おわかりいただけるだろうか。身の毛もよだつよ?
それに、ひ、ひとり?・・私たち、1対1で会うことになってたんですか!?

絶対イヤだ!
「本当に申し訳ありませんッ!本当に急用で!」と電話を切ってしまった。

その後、何度も鳴り響く電話。
私はその電話に出られないでいた。

そして数時間後、恐る恐る電話に出ると、
「今、家に戻って来たよ・・僕のことがイヤだったんだろ?」と先生。

「違います!本当に急用で。さっきその用事が終わったところで」と私。

「ホント? じゃ、また誘っていいの?」

「・・・」


しかし彼もそこまでバカじゃなかったようで、私を誘ってくることはなかった。

私はそれ以降も、かなり憂鬱な日々を過ごした。

先生に無礼を働いたことへの申し訳なさ、これからもその先生の授業で顔を合わさねばならない気まずさ、そして単位をくれないかもしれないという懸念まであったからだ。

「オワタ・・わしもう卒業できんかもしれん・・」

しかし単位は無事でホッとした。
連絡先を含めた個人情報を握られてることはずっと不安だったが。

もしあの時、渋々待ち合わせ場所に向かって、「車に乗って」などと言われたら、はたしてちゃんと断れただろうか・・?

そこには大いなる逡巡と葛藤があったはずだ。
「絶対乗りたくない」という気持ちと「一体どう断ろう?」という気持ちと「相手の気分を害したくない」という気持ち。

そのまま自宅に連れて行かれ、今回の被害者と同じような目に遭ったら、世間や周囲の人は私を糾弾したのだろうか・・それを考えるとゾッとする。

普段つかない「ウソ」をつき、普段やらない「すっぽかし」をし、非常に無様な切り抜け方をした私は、胸を張って「断りました」と言える立場にないのだホントは。

だけど、被害に遭うリスクを少しでも感じたら、どんなに無様でもいいから早い段階で回避してほしい・・新生活を迎える人の多いこの時期、そう切に願うのである。

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