「ボク」は十年後「奥さん」になった
「そこのボク」と、後ろから声を掛けられた。
小学校高学年の頃、バスの中で。
まさか自分に言われてると思わなかったが、振り向くと、その人と視線がぶつかった。
衝撃だった。
その時の私は、ちょい長めのショートヘアでパンツスタイル、キャップまでかぶっていたので、ま、しょーがないっちゃしょーがない。
ただ、この3点セットは金輪際やめよう、とも思った。
そして数年後、「どちらにお勤め?」と聞かれた。
中学生の頃、美容院で。
黒髪のボブヘアで、ごくごく普通の中学生らしいファッションなのに。
衝撃だった。
しかも何回か通った美容院の美容師から。
当然こっちは「中高生だとわかってくれてる」と思い込んでたが、あっちは私をOLか何かだと思ってたわけだ。
そしてそのまた数年後、「奥さん」と呼び止められた。
大学を出て間もない頃、デパ地下で。
衝撃だった。
そりゃその年代で奥さんになってる人もいようが、その若さで見ず知らずの店員から「奥さん」とは呼ばれたくなかった。
なぜ私がそんな思い出話をするに至ったかってーと、とあるイラストレーターのコラムを読んだからで。
50代半ばである彼女が、アミューズメント施設の係員から「お母さん」と呼びかけられた経験を語ってて。
彼女は独身で子どももいないのに、30代前半くらいの男性から「お母さん」と呼ばれた、と。
テレビでもよくあるじゃない、タレントや番組スタッフがロケに出て、道行く熟年者をとっつかまえては「お父さん」「お母さん」と。
「風貌が若くない」というのが理由なら失礼だし、「誰かの親であるはずだから」というのが理由なら、違った場合にとっても失礼。
風貌が若くないという理由で30代前半の人が「お父さん」「お母さん」と呼ぶ相手は、明らかに自分の祖父母くらいの年代に見える人じゃないと失礼かも。
相手が全く熟年者でもないのにそう呼んでるケースもあり、ヒヤヒヤする。
親しみを込めてのことなんだろうけど、自己満足だろそれ。
子連れの人に対してなら何の問題もないんだが。
さて、その女性、「お母さん」と呼ばれたのは初めてで、どう思ったかってーと・・
「イヤではない。嬉しくもない」
へー、イヤではないんだー。
新鮮だった。
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