『HEY!HEY!HEY!』が終了するんだって

番組が打ち切られる前ってのは、迷走しだすんだよな。
あれやこれや手を出して、ジタバタすんのよ。

この『HEY!HEY!HEY!』も同じ。本筋とはかけ離れた内容がどんどん多くなっていった。
お笑い芸人を呼んで何かやらせてみたり、昔の映像を垂れ流してみたり(『うたばん』の打ち切り前もそんな感じだったなぁ)。しまいにゃ「面白いネット動画を観ましょう」的なコーナーまで出来て、断末魔の様相を呈していた。

しかし、『HEY!HEY!HEY!』の終了には、それなりに感慨深いものがある。
当初はなかなか画期的な番組だった。司会のダウンタウンがゲスト歌手に媚びずに、自分たちのペースにどんどん巻き込んでいくのだ。当時のダウンタウン人気とJポップ人気との相乗効果で、たちまち高視聴率番組となっていった。

音楽番組の危機を迎えるのは今回で2度目である。
『HEY!HEY!HEY!』が始まる4~5年前(89年~90年)、歴史ある2大音楽番組が消滅した。『ザ・ベストテン』と『夜のヒットスタジオ』である。

その理由を私はこう考える。
結局80年代の音楽番組は、どんどんアイドル歌謡中心になっていった。
アイドル歌謡に夢中になるのは若者である。しかし若者というものは移り気だ。
バンドブームが起こると、そちらに流れていってしまった。

ロックバンドの活動の中心はテレビではなくコンサートやライヴである。
こうして、若者たちの音楽番組離れは加速していく。

80年代に隆盛を極めたアイドルたちも、20代の大人になっていき、一様に勢いをなくしていった、ということもある。松田聖子は海外志向のわけわからんカンジになっていき、中森明菜は自殺未遂にて活動休止、チェッカーズや光ゲンジの人気も下火になり、アイドル四天王(南野・中山・工藤・浅香)の人気も落ち着いていく。

かと言って、代わりとなる強力なアイドルは出てこず、世代交代が上手くいかなかった。

80年代末から90年代初めは「アイドル冬の時代」と呼ばれる。
アイドル不作の時代ということなのか、アイドルにとって不遇の時代ということなのかは不明。
ただ、そのきっかけは、さかのぼれば「おニャン子クラブ」にあるのではないかと思う。

おニャン子クラブのメンバーは80年代後半に、どんどんソロでレコードデビューした。
そもそもが、クラブ活動気分でテレビに出ていた素人女子高生たちである。
クラブ活動の延長のような感じで歌を歌って、人気やレコード売り上げが本物のアイドルを凌いでいく。

アイドル歌手ってこんなチョロいものだったんだ…と若者たちは気づき始める。
そして、本業でアイドルをやってるコたちのことが、何だかバカに見えてくるのである。
「素人が片手間でできることを、一生懸命やってるコたち」ってな目で見るのだ。

豪華なドレスに身を包み、巧みに踊り歌いあげる中森明菜より上位にランクインされているのが、幼稚園児のように拙い歌と踊りのおニャン子たちなんである。
マジに踊り歌いあげることが「時代遅れ」であるかのような感覚にすらなるのである。

その結果、若者たちはアイドル歌手という存在に胡散臭さを感じ始めたのかもしれない。
それだったら、自分の言葉で曲を生み出すミュージシャン(ロックバンド)の方が魅力的だと。

こうして若者の「アイドル離れ」は進んでいったのだと思う。
その後、おニャン子クラブも解散し、一気に「アイドル冬の時代」へと突入するのだ。

当時は、アイドル歌謡というものを偏重しすぎた音楽番組が自滅していったのであり、人々が音楽に対する興味を失っていたワケではない。
しかし、昨今の音楽番組の危機的状況は、何だかお先真っ暗な気分にさせられる。

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