マサムネ氏の心の闇

文春新書『Jポップの心象風景』(烏賀陽弘道 著)をゲット!
ずっと欲しかったんだけど、なかなか書店にはなくて。
Jポップの心象風景 (文春新書)
でもこれ、6年も前の本なのよね。
それでも欲しかった理由は、草野マサムネ氏のことが書かれた章があるらしかったから。

他のアーティストの章も「う~ん…」ってカンジだったけど、マサムネ氏の章もそんなカンジだったわね。期待が大きかっただけにね。私にはただのこじつけにしか感じられなかった。
どの章もだけど、「えーッ、この人の感性をそっちの世界と結びつけるかぁ~!?そんでもってそこまで膨らませるかぁ~!?」みたいな。

スピッツの曲には「まるいもの」がたくさん出てくる、と言う。

特にデビューアルバム『スピッツ』には、全ての曲に「まるいもの」が出てくる、と。
その「まるいもの」が全て列挙されているのだが、どーにも無理がある…「月」だの「太陽」だのは、どんなアーティストの曲にもよく出てくる言葉だし、「石」「おなか」「魂」「頭蓋骨」「雨」「蜘蛛の巣」、はては「うめぼし」までも「まるいもの」として挙げているのだ。

『ヒバリのこころ』だけは「まるいもの」がなかった、としながらも、♪いろんなことがあったけど みんなもとに戻っていく という円環運動のメタファーが入っていると言う…ムリヤリやーん。

そして「草野がまるいものに人並みはずれた執着を抱いていることは明白だ」と断言した上で、精神分析学や宗教学の見地から解説していくのである…う~む。

ま、マサムネ氏の歌詞には「とがったもの」も結構出てくるんだけどね…。

あとは、もう幾度となくいろんなところでマサムネ氏が語ってきた「孤独」と「死」に対するスタンスについて。

子どもの頃は「川で溺れ死んでも両親ぐらいしか泣いてくれないのかな」と思ったり、大人になってからも、何らかの集合の場で自分が頭数に入れられなかったりしたら「眼中に置かれてなかった」と落ち込むほどの「仲間はずれ恐怖症」みたいなものがある、とのこと。
愛情たっぷりの家庭で育ったはずなんだけどな。何でそんなに孤独を感じやすいのかな。

「死」については、子どもの頃、父方と母方の祖父が続けて亡くなって、その亡骸を見て、死ぬのが怖くてたまらなくなり、死亡事故のニュースが流れてくるだけでゾーッとして耳を押さえたりしていたらしい…しかしこれは、今のマサムネ氏の姿とも重なる。
東北大震災のニュースを見て心身を病んでしまったマサムネ氏…これは未だ彼にとって「死」が大いなる恐怖だからではないか。

しかし一方で、「モノを集める(コレクションする)ことはない。どうせ死ぬんだし、と思うから」と言い放ち、「死」というものを冷めた目で見ている側面もある。

「死」に対する「恐怖」と「諦め」の間をさまよいながら曲を生み出すのが「マサムネ流」なのだ、と結論づけてみる私である。

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